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赤木雄
仕事一覧

AIエージェントの世界

チャット画面ではなく、歩いて入れるゲームのような世界でAIエージェントを動かす。ローレンス・リバモア国立研究所での、材料科学を題材にした事例研究です。

材料レビュー画面とドット絵のラボが並び、その上に The World of AI Agents のタイトルが重なっている。
担当
発案・開発リード
2026年 夏
使用技術
PythonJavaScriptNext.jsTailwind CSS

エージェント型のAIシステムは強力で、いろいろなところで使われるようになってきました。どう実装するかが、年々重要になっています。

ただ、その多くはチャット画面かコマンドラインの向こう側で動いていて、中で何が起きているのかが見えません。そこで私たちは、別のかたちを試してみました。エージェントの姿が見えて、操作が直感的で、そして使っていて楽しい。そういう関わり方です。

デモ動画 · 2分19秒

システムを一通り動かしたところ

ローレンス・リバモア国立研究所でのインターンシップ中に、材料科学を題材とした事例研究として開発しました。

課題:3Dプリントした金属を検査する

私たちのチームに与えられたのは、3Dプリントされた金属部品の品質評価を自動化する、という課題でした。

金属の部品は、レーザー粉末床溶融結合(L-PBF)という方法でプリントできます。金属の粉末にレーザーを当てて溶かし、一層ずつ融合させていく方法です。できあがった部品は、さまざまな用途に使われます。

ただ、プリントはいつもうまくいくとは限りません。部品の内部に欠陥ができることがあり、そうなると部品はもろくなって、壊れてはいけないところで壊れます。外から見ても内部はわかりませんから、CTスキャンで内部構造を撮影し、その画像を検査する必要があります。その部品を信頼してよいかどうかを決める工程です。

そしてこの検査は、これまで人の手で行われてきました。専門家が一つひとつ見ていくので、時間もお金もかかります。工程全体のボトルネックになっていることが少なくありません。

画面:歩いて入れる世界

つくったのは、ゲームのような世界です。多くの人が子どもの頃に遊んだポケモンのような見た目で、そこに歩いて入っていきます。

草むらにはウサギやリス、コヨーテが走りまわっていて、中に入れる建物もあります。ラボに入ると、4体のエージェントがそれぞれの席にいます。

上から見たドット絵の町。DSSI と LAB と書かれた建物が二つ、LIVERMORE の看板、草むらにはウサギやリス、コヨーテがいる。
町。右の建物がラボ
ラボの内部。AGENT DESK と書かれたカウンターの奥に Jasper、Andrew、Naoki の3体、手前のヘルプデスクに Yu が立っている。
ラボの中。4体がそれぞれの席にいる

作業は、エージェントに直接話しかけて始めます。彼らは働いているあいだ、世界の中を実際に動きまわります。だから4体がいまどうなっているのかが一目でわかりますし、進捗は頭の上の吹き出しに出ます。見えないところで何かが進むことはありません。

機械の前に立つ2体のドット絵のエージェント。頭上の吹き出しに「Sharing results… 23s」「Polishing report view… 23s」と表示されている。
進捗は頭上の吹き出しに

4体のエージェント

4体いて、それぞれ私たちの名前が付いています。

Yu ― 案内役

システムについての質問に答え、ほかの3体の使い方を教えてくれます。ここが何をする場所なのかまだわからないとき、とりあえず話しかけてみる相手です。

コンソール画面。「How can I visualize the CT scans?」という質問に対して、エージェント Yu が手順を番号付きで答え、ほかのエージェントの役割も説明している。
使い方を聞くと、手順で返ってくる

Andrew ― CT検査

CTスキャンを可視化し、その中の欠陥を見つけます。スキャンは回転も拡大もできる3Dモデルとして表示され、疑わしい箇所と確定した欠陥が色分けされます。隣には元のスライス画像が並びます。

材料レビュー画面。左に欠陥を色分けした格子構造の3Dモデル、右にスライダー付きのCTスライス画像、下に評価済み・欠損・疑いのある支柱の本数が並んでいる。
18,097本の支柱を評価。72本が欠損、85本が疑わしい

Naoki ― レポート作成

解析結果を、データセット単位の品質レポートにまとめます。HTMLでもPDFでも出力できます。決まった書式が一つあるのではなく、どんなレポートが欲しいかを伝えると、その通りに書いてくれます。

生成された品質レポート。位置合わせと欠陥検出のサマリー、分類の円グラフ、製品ごとの表が並び、その隣にゲーム画面と「Report ready!」の吹き出しが見える。
レポートができると、隣の世界で知らせが出る

Jasper ― 物理シミュレーション

部品が実際にどれくらいの強度を持つのかを調べるため、範囲を限定した物理シミュレーションを組み立てます。まず対話しながら計画を立て、次に「シミュレーションカード」を提示して、何を実行するつもりかを示します。こちらが承認するまで、計算は始まりません。

シミュレーション画面。Ansys MAPDL の解析による欠陥部の変位分布がアニメーションで表示され、右の対話パネルでエージェント Jasper がその結果から何が言えて何が言えないかを説明している。
シミュレーション結果と、Jasper による但し書き

この事例が示すもの

この事例研究で大事なのは、金属の話ではありません。エージェント型のシステムは、チャット画面である必要はない、ということです。

エージェントに居場所を与えて、そこで働く姿を見せる。それだけで、システムは理解しやすくなり、使っていて気持ちのよいものになります。この考え方は、まったく別の分野で、別の仕事をするエージェントにもそのまま応用できるはずです。持ち帰る価値があるのは、そこだと思います。

謝辞

素晴らしいインターン仲間である Naoki Sakai、Andrew Pearce、Jasper Dong に感謝します。6週間足らずでこれをゼロからつくれたのは、三人の才能とチームワークがあったからです。

DSSI の運営の方々、そしてメンターの皆様にも、期間を通じてのご支援とご指導に感謝します。一緒に学び、つくった時間は本当に楽しいものでした。最高の夏をありがとうございました。